HISTORY

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食糧化学研究室の創設

 本研究室は、昭和21年1月に山藤一雄教授により創設された農芸化学科農産製造学講座をその起源とする。山藤教授は農芸化学科生物化学講座の奥田謙教授(終戦後最初の九州大学総長)の門下生であり、奥田謙先生は東京大学農学部の鈴木梅太郎先生の門下生である。山藤教授は、農学部長(昭和37年6月から41年5月)として食糧化学工学科(現応用生物科学コース食糧化学工学分野)の創設に貢献し、昭和40年4月に新学科が発足した。それに伴い、農産製造学講座は食糧化学研究室に名称が変更された。山藤教授は、食糧化学研究室の初代教授に就任し、昭和45年3月に定年退職となった。同年7月に大村浩久助教授が教授に昇任し、翌年8月に食品衛生化学講座の村上浩紀助手が助教授に発令された。大村浩久教授は、平成元年3月に定年退職し、そのポストを利用して平成元年4月に遺伝子資源工学専攻細胞制御工学講座が創設された。本講座の初代教授には、村上浩紀助教授が就任し、助教授には尚絅短期大学の白畑實隆助教授が就任した。食糧化学研究室の助教授には、同年10月に山田耕路助手が昇任した。平成3年8月には栄養化学講座の菅野道廣教授が食糧化学研究室の教授に就任し、平成9年3月に定年退職した。同年4月に山田助教授が教授に昇任し、現在に至っている。この間、立花宏文講師が平成8年12月に生命化学担当助教授に就任して本研究室に配属され、助教授2名体制となった。また、立花助教授は平成24年4月に教授、同年5月に主幹教授に任命され、教授2名の体制となった。山田教授は平成27年3月に定年退職し、平成30年3月には野中美智子助手が定年退職した。平成29年4月に九州大学先端融合医療レドックスナビ研究拠点の藤村由紀准教授が特任准教授として着任し、平成30年4月に准教授に就任した。また、令和3年4月に熊添基文氏が助教(特定プロジェクト教員)として就任し、現在、3名の体制で研究室を運営している。

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初期の食糧化学研究室

 初代教授である山藤一雄教授は、家畜ウイルス病の誘発に関する先駆的な研究を行い、ヒドロキシルアミンによるウイルス病の誘発に初めて成功した。さらに、ウイルス遺伝子が家畜細胞の染色体上に存在することを証明し、現在の遺伝子工学の発展につながる先駆的な業績を残した。これらの研究は、世界的に高い評価を受け、昭和37年11月にスウェーデン化学会よりシェーレ記念メダルを授与された。大村教授は、山藤教授の研究を発展させ、ビタミンC等のレダクトン類の生理機能に関する広範な研究を行った。
 それと並行して、村上浩紀助教授は芳香族レダクトン類の生理機能に関する研究を開始し、その機能検定系として動物培養細胞の導入を行った。また、村上助教授はアメリカのGordon Sato教授の元に留学し、動物細胞の無血清培養技術をわが国に紹介した。帰国後、ヒト型ハイブリドーマの作成に成功し、ヒト型モノクローナル抗体の大量生産に関する研究において先導的な役割を果たした。これらの研究は、食糧化学および細胞制御工学研究室の現在の発展の基礎を築くものであった。村上助教授の元で研究を行った山田耕路助手(その後助教授、教授)は、動物細胞培養法を確立するとともに、アメリカ留学から遺伝子工学技術を持ち帰り、本研究室の研究能力の拡大・高度化を行った。

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発展期の食糧化学研究室

 菅野道廣教授は、栄養化学研究室で培った動物実験技術を食糧化学研究室に定着させ、本講座の研究能力をさらに拡大した。また、食糧化学研究室の主研究対象であった糖質および抗酸化成分に加え、脂質およびタンパク質の生理機能に関する研究を行った。その結果、本研究室は生化学、遺伝子工学、細胞培養、動物実験などの幅広い実験技術を駆使し、ほとんどの食品成分の機能を検定しうる数少ない研究室となった。それによって、制癌、脂質代謝調節、免疫調節など、各種疾病の予防に関する総合的な研究が実施可能となった。
 また、菅野教授は食糧化学研究室の教授就任を契機に、山田助教授との共同で食物アレルギーの予防に関する研究を開始し、抗アレルギー成分を利用した抗アレルギー食品の開発を提唱した。さらに、食品成分の体調調節機能における相乗効果の存在を明らかにし、食品機能の総合的利用の必要性を示した。これらの研究は、山田教授により引き継がれ、種々の疾病の予防に働く多機能性食品の開発へと進展した。
 この間、本研究室の卒業生および教員は大学運営にも多大の貢献を行ってきた。和田光史総長(平成3年11月から7年11月)は農産製造学講座出身であり、菅野教授は学生部長(平成4年9月から6年8月)および留学生センター長(平成7年4月から同9年3月)を務めた。また、山田教授は総長特別補佐(平成16年4月から17年11月)および教育担当理事副学長(平成17年11月から20年9月)を務めた。

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近年の食糧化学研究室

 近年の食糧化学研究室の研究は、立花准教授(平成19年に助教授から名称変更)を中心に展開されてきた。これは、山田教授が大学本部での業務に多くの時間を割く必要があったためである。立花准教授は食品成分の機能発現に関与する標的因子(緑茶カテキンEGCGを感知する細胞膜上の受容体:67-kDaラミニン受容体〔67LR〕)を世界に先駆けて発見し、種々の食品成分の体調調節機構に関する先導的な研究を行ってきた。その研究は、国内外で高く評価され、平成16年11月に日本農学進歩賞、平成18年3月に日本学術振興会賞を授与された。立花准教授の活発な研究活動を支援するため、九州大学農学研究院では特別昇任制度が創設され、立花准教授は平成24年4月にその適用を受ける最初の教授となった。それによって、同年5月の主幹教授任命が可能となった。平成30年4月に着任した藤村准教授はメタボロミクス・計量化学的技法(メタボリック・プロファイリング法)を食品機能学分野に先駆けて導入し、新たな食品機能性評価法の開発ならびに立花主幹教授や熊添助教と共に、当該技術と67LRを基軸とした緑茶カテキンセンシング研究を組み合わせた機能性増強成分の同定法を見出している。また、熊添助教は、cGMPに着目した腫瘍免疫学的研究や食品機能学分野への応用展開、ならびに米国製薬ベンチャーとの創薬に関わる共同研究を精力的に推進している。緑茶カテキンシグナリングの解明による新たな生物学的意義を提示するフードケミカルバイオロジー研究、緑茶カテキンセンシング研究を基軸とした食品成分間の機能的相互作用(機能性フードペアリング)研究、新たな食品機能性因子としてのマイクロRNA研究を展開している立花主幹教授の研究成果に対して、平成22年に日本食品免疫学会賞、平成29年に安藤百福賞優秀賞、平成29年に文部科学大臣表彰科学技術賞(研究部門)、平成30年に飯島藤十郎食品科学賞および日本栄養・食糧学会賞など多岐にわたる賞が授与された。また、立花主幹教授は令和8年に日本の農学研究者間における最高の栄誉とされている日本農学賞および読売農学賞を授与された。

 農産製造学および食糧化学研究室の研究の発展には、助手(現在は助教)をはじめとする教室関係者、多数の卒業生、学内外の共同研究者の協力により達成されたものである。農産製造学講座から約150名が卒業し、食糧化学研究室からすでに400名以上の学生が卒業し、さまざまな分野で活躍している。両講座の出身者の特徴は博士号を取得した学生の比率が高いことであり、多くの卒業生が大学教員に採用されている。農産製造学講座出身の大学教員数は30名を超えており、食糧化学研究室出身の大学教員数もすでに40名を超えている。