RESEARCH CONTENT

緑茶カテキンの作用機構の解明
(なぜ緑茶が健康に良いかを科学する)

緑茶カテキンは日本人が日常的に摂取するポリフェノールの代表です。これまで、緑茶の摂取は認知症リスク、心血管疾患リスク、がんリスクを低下させ、長寿と関連していることが知られていました。しかし、その具体的な作用機構(効果を発揮する仕組み)は不明でした。
当研究室では緑茶のカテキンが細胞膜上のタンパク質である67 kDa Laminin Receptor (67LR) に結合することで細胞内シグナル伝達を引き起こし、健康増進効果を発揮することを世界で初めて発見し、Nature の姉妹誌に掲載されました (Nat. Struct. Mol. Biol. 11, 380–381. (2004))。また、その作用機構解明を進めた結果、緑茶のカテキンはcGMPと呼ばれるセカンドメッセンジャーの産生誘導を介して、抗肥満、抗炎症、抗がん作用を発揮することを明らかにし、医学研究のトップジャーナルに掲載されました (J. Clin. Invest. 123, 789-799 (2013))。

緑茶の作用機構解明から機能性フードペアリングへ 
(分子機構とケモメトリクス、メタボリックプロファイリングをもとに食品をデザイン)

緑茶カテキンの抗肥満作用は特定保健用食品(トクホ)などで応用されていますが、その効果は限定的です。そこで43種類の茶品種の代謝物プロファイルを包括的に解析し、茶品種間の成分の違いと活性の差に着目し解析を進めました。その結果、茶中に微量に含まれる柑橘ポリフェノールが緑茶カテキンの作用に重要なcGMP産生を増強し、その生理活性を増幅することを発見しました (J. Nat. Prod. 84, 1823-1830, (2021))。

分子機構解明からヒト臨床研究へ

実際に*プラセボ対照並行群間二重盲検比較試験という非常に信頼性の高い形式のヒト臨床試験において、緑茶カテキンと柑橘ポリフェノールの併用が強力に抗肥満作用、糖尿病予防作用を発揮することを証明しました。標的分子・作用機構に基づき食品因子を組み合わせ、ヒトでその効果を実証した前例はほとんど無く、食品の機能性研究における画期的な成果といえます (Sci. Rep. 11, 19067, (2021))。

*成分が本当に効くのかを、公平に・偏りなく確かめるための信頼性の高い臨床試験方法

植物マイクロRNAの生体保護作用の研究

マイクロRNAは約20塩基からなる短鎖核酸であり、標的遺伝子の発現を制御することにより、生体の恒常性維持に重要な役割を果たしていることが知られています。近年、植物由来マイクロRNAの一部が体内に取り込まれ、哺乳類において機能を発揮する可能性が報告されているが、その作用や生理的意義については未だ不明な点が多いのが現状です。このような背景のもと、当研究室では、コメに特徴的に含まれる植物マイクロRNAが顕著な生体保護作用を有することを明らかにし、その成果を論文として報告しました (Sci. Rep. 13, 2128, (2023))。さらに、他の植物由来マイクロRNAについても検討を進めた結果、概日リズムの調節、免疫機能の制御、さらにはパーキンソン病の予防に寄与する可能性を見出しています。